インラインとオフセット

インラインとオフセット

フルートの管体には多くのキーが並んでるが、胴部管上側面のキーがすべて一直線に並んでいるものを「インライン」、左手の薬指にあたるキーが外側(左腕に近い方)に少しずれているものを「オフセット」と呼ぶ。
ベームが製作した楽器はすべてオフセットであり、より楽な手の形で操作することが可能である。
オフセットは構造的にシンプルで、メンテナンスもインラインより容易となる。
また、笛のほぼ中心に座金、ポストを半田付けするため、インラインに比べ、多少の響きの損失があるとする見方もある。
一方、インラインの楽器はリングキーに多く、見た目は美しいが、正確にキーを押さえるために左手薬指をオフセットの場合より多く伸ばさす必要があるため、手が小さい奏者には向いていない。
インラインの楽器の方が、製作する際の部品点数は少なくなるが、同一軸に配置されるキーの数が多いためメンテナンスはオフセットに比べ面倒である。

Eメカニズム

Eメカニズム

「Eメカニズム」「スプリットE」は、第3オクターヴのホ音 (E6) が楽器の音響学的構造から出しにくく、またピッチが高い場合が多いため、これを解消するために考案された機構である。
一般的なEメカニズムは、キーシステムの追加によりE6の運指で閉じるキーを増やすもので、E6の発音およびピッチは改善されるが、特定の換え指およびトリル運指が使えなくなる。
また、楽器がわずかに重くなるため、音色に影響するという意見もある。
ドイツ系の奏者、メーカーのフルートに装備されることが多く、逆にフランスではEメカニズムの音響は不自然とされ一般的ではない。
ドイツの古いメーカーには通常のEメカニズムよりも更に多くのキィを塞ぐ「ダブルEメカ」というシステムも存在する。
メーカー、オフセットかインラインか、ピンありかピン無しか、ブリッジが外側にあるか内側にあるか、によりシステムが異なるため一口にEメカニズムと言っても様々である。
通常Eメカの装備されていない楽器には、キィポストの不足による耐久性の問題、外観を損なう、改造費用等の問題等の理由からEメカを後付けする事は難しい。
ユーザーの「Eメカの後付け」発注を前述の理由から断固拒否するメーカーもあれば、後付け工事を行っている所もある。
その見解は各メーカーの方針によって様々である。
楽器メーカーによっては、同様の効果を得るためにキーシステムの追加ではなく特定のトーンホールを小さく(もしくは半円形に)する方法を採用している場合があり、これを「ニューEメカニズム」「Lower G insert」「G doughnut」と呼んでいる。
この方法では、使えない運指が発生することはほとんどないものの、第1・第2オクターヴのイ音 (A4, A5) のピッチに影響する場合がある。
また、キーカップを押さえるレバーを途中で分割、可動式にしEメカニズムのオン・オフを切り替えられるようにしたクラッチ式Eメカニズム(Eメカニズム・ヒンジ)も存在する。
同様の理由で第3オクターヴの嬰へ音(F♯6)も音響学的構造から問題を抱えている。
しかしこれを回避するためのF♯メカというものは構造、耐久性等の理由から未だ各メーカーとも商品化できていない。

Cisトリルキー

Aisレバーの上流にあり、B-C#のトリルを容易にするための右手人差し指で操作するキーである。
それだけではなく、第3オクターヴのG-A (G6-A6) のトリルも容易になり、弱奏におけるG#6の発音が容易になる。
Cisトリルトーンホールは、DトリルトーンホールとBトーンホールの間にあり、主要なトーンホールと同じ大きさで、Bの運指にCisトリルキーを押すとC#のピッチが合うように設計されている。
また、通常のCisトーンホールは極端に小さいため発音の困難、ピッチの不安定、音色の問題が伴うが、トリル以外のCisにもCisトリルキーを活用することで、これらの欠点を補うことが可能である[1]。
デメリットとして、D5・D#5・D6の音色・音程を若干犠牲にする、楽器が重くなる、取り付け費用が高価であることなどが挙げられるため、Cisトリルキーを標準装備するメーカーはほとんどないが、アメリカでは非常に人気のあるオプションである。
ドビュッシーの「牧神の午後への前奏曲」冒頭のC#で始まるフルートソロは、通常のC#の不安定な音が幻想的な曲想を高めるために用いられている。

Cisトリルキー

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