第3オクターヴのG-A (G6-A6) のトリルを容易にするためのキーである。
かつてドイツのフルートでよく使われたメカニズムであるが、現在では同じ機能をCisトリルキーで実現できる上、前述のように用途も広いためCisトリルキーに取って代わられつつある。
表側にGisトーンホールが1つもつものが「Gisオープン式」、表側と裏側にGisトーンホールを2つもつものが「Gisクローズ式」である。
日本で「フルート」と呼ばれるものは基本的にGisクローズである。
両者の運指は一緒ではない。
日本にもGisオープンシステムのフルートを愛用するプロ奏者は存在する。
Gisクローズ式では左手薬指を押すとG,Gisトーンホールの双方が閉じ、左手小指を押す事により裏側のGisトーンホールが開く仕組になっている。
Gisオープン式ではGトーンホールを左手薬指、Gisトーンホールを左手小指で押して閉じる。
フルートの響きはトーンホールの数、及び管体に座金を半田付けした面積に比例して悪くなると言われている為、トーンホールを一つ分、座金、ポスト1セット分を節約できるGisオープン式の方が音色が優れていると言う見方がある。
又、G♯やE♭3等、Gisトーンホールがあいている状態の音において、カップの開放の方向が前方を向いているか、後方(下)を向いているかが奏者に対し大きな響きの違和感を与える。
通常フルートの音は歌口を含めた開放された全ての穴から発せられるので、その穴が後方に向かって開放されていたのでは響きが前に飛ばないのは明らかである。
しかしこのオープン式の運指では常に左小指を動かす事が要求されるためGisクローズ式に比べ指回しが激しく困難になる。
この点がGisクローズ式が広く世界に分布した理由である。
Gisオープン式では前述の「Eメカニズム」をオプションで取り付ける必要がない。
アメリカ、ヨーロッパ、アジアにおいて一般的に使われているのはGisクローズ式であるが、ロシアを始めとする東欧の諸国ではGisオープンが現在でも珍しくない。
フルートの教則本の著者として有名なP・タファネルの使っていた楽器は左手小指のレバーを押すとそれまで塞がれていたG♯のカップが上に上がると言うシステムのものだった。
これは現在のメーカーでも再現可能だが、機構に若干の抵抗が存在するため耐久度は決して高いものではない。
金属製の楽器の場合、トーンホールが管体から立ち上がってキー(タンポ)と密着しているが、この立ち上がり部分をどのようにして製作するかによる分類である。
「ソルダードトーンホール」は管体となるパイプに別の部品をはんだ付けすることによりトーンホールを作成するのに対して、「ドローントーンホール」はパイプそのものを引き上げ加工して、トーンホールを形成する。
管厚やキーメカニズムなどが同じであれば、ソルダードトーンホールの方が重くなる。
ソルダードトーンホールの方が吹き込む際に抵抗感が増すとされる。
比較的安価な楽器の多くはドローントーンホールである。