特殊奏法 (現代奏法)

特殊奏法 (現代奏法)

フルートは近代音楽や現代音楽において特に特殊奏法が多く開発された楽器である。
一つの奏法を取り上げても作曲者や奏者により様々な呼称、やり方がある。
特殊奏法については未だ発展途上であり新しい奏法が今後も開発されていく事が予想される。




エオリアン・トーン(ブレス・トーン)
発音と同時に息が歌口や歯の間から漏れる噪音を発する奏法。
通常の奏法からライザー部にあてる空気の柱を極端にぼかす事により生じる。
楽音は存在するが空気の流れる音の占める割合のほうが大きい。
この割合が作曲者によって細かくパーセント記号で指示されている物もある。

キィ・パーカッション(キィ・クリック、キィ・クラップ)(英語:key percussion)
キーを強めに叩くことにより、打楽器的効果を狙った奏法。
エドガー・ヴァレーズの『密度21.5』で初めて用いられた。
(厳密には『密度21.5』に登場する奏法はスタッカートの通常奏法とキィ・パーカッションとの併用である。)

口笛
フルートとの通常奏法と同じ構え、または唄口内に口笛を吹く事によって通常の口笛よりもフルートの管に共鳴させた音を作り出す事が出来る。
その際発生する音は運指の自然倍音列上の音である。
口笛を吹きながらフルートの通常音を鳴らす事は理論上は不可能であるが、口笛の音+エオリアン・トーンであれば可能である。

ジェット・ホイッスル(英語:Jet whistle)
歌口を唇で完全に覆い、息を激しく吐き出す事により発声した息音を使用する奏法。
唇、フルートの角度を瞬時に変化させる事で息音内に含まれる楽音を自然倍音列に従い上昇、下降させることができる。
発声する楽音は運指によっても変化する。

重音奏法(英語:multiphonic)
特殊な運指により2音以上の重音を出す奏法。
運指により、調性的な和音に近いものから、割れたような荒々しい音を出す事が出来る。
R・ディックのフライング・エチュードではこの重音奏法が全体にわたりフューチャーされている。
重音の運指の書かれた文献としては小泉浩、P・E・アルトー、O・ニコレの物が有名である。

循環呼吸
内容については循環呼吸の項を参照。
現代作曲家による指示、鍵盤楽器、弦楽器への音楽的なアプローチ、音楽的なフレーズ作り、等の理由により近年フルート界でも一般的になりつつある奏法。
特にフルートは他の管楽器に比べて空気の消費が多い楽器であり、循環呼吸をマスターする事により音楽的な質をより高める事できるというメリットの点からも推奨されている。
その事はいくつかの著名なフルーティスト達の著書において「現代奏法」の項に「循環呼吸」についての説明が必ず記載されていることからも判断できる。
(O・ニコレ、P・ガロワ、R・ディック、W・オッフェルマンズ等)

スラップ・タンギング(ピッツィカート、リップ・ピッツィカート、クアジ・ピッツィカート)(英語:slap tonging 伊語:pizzicato)
弦楽器のピッツィカートに似た音響を発する。
通常のタンギングの圧力を高めるやり方、舌を唇にあて内圧で弾くやり方、両唇を弾くやり方等がある。
グランド・フルートではC4(B足部管つきでB3) - D#5までは通常の運指で、さらにオクターヴキーを開ける、その他の操作をすることによりD#6まで発音可能。

タングラム(英語:tongue ram)
唇全体で歌口を覆い、舌を勢いよくライザー部に当てることにより、管体に共鳴させる。
これによりフルートは閉管構造として共鳴するため、運指よりも長7度低い音が出る。
グランド・フルートでは運指上でC4(B足部管つきでB3) - D#5まで可能、実音ではC#3 (C3) - F4までの音が出る。
サルヴァトーレ・シャリーノが『魔法はどのように生み出されるか』でこの奏法を積極的に用い、太鼓の連打音のような音響を生み出すことに成功した。
フラッターツンゲと組み合わせることによりフラッターでの伸音も可能であり、これにより従来のフルートよりもさらに下方のいわゆる金管楽器でいうペダルトーンに似た効果が出せる。
この効果もシャリーノが多用している。

ハーモニクス(フラジオレット、倍音奏法)(英語:harmonics)
低音域の運指のまま高い倍音を出す奏法。
曲によって力強い音を出したり、弦楽器やハープのハーモニクスのような虚ろな音響効果を要求したり様々である。
フランツ・ドップラーがハンガリー田園幻想曲の第1楽章の終わりに用いている他、ハーモニクスの和音がストラヴィンスキーの春の祭典にも登場する。
倍音成分の度合いを変化させる事で重音を出すことも可能。

バズィング(トランペット・アンブシュール)
歌口に対し唇を閉じた状態で押し付け金管楽器のバズィングと同じやり方で唇を振動させ音を鳴らす奏法。
息の圧力や指を変えることで色々な音域が出せるが、フルートのマウスピース、管は金管楽器のようにバズィングをして発声を促すのには向いていないためスケールは安定しにくい。
非常に高い圧力が必要な事から、この奏法をした直後は唇に激しい疲労感を覚える為、長時間のフルートでのバズィング奏法は注意が必要である。

発声奏法(プレイ・ウィズボイス、グロウル)
通常演奏と同時に声を出すことにより差音がハウリングを伴い発生する。
フルートの一音程の通常音と同時に奏した場合に、高い声と低い声では発生する差音に違いが生じるため男女でこの奏法の内容は大きく異なる。
フルートの音と違う音程を同時に歌うことにより和音が、リズムをずらして歌うことにより2重奏が可能である。
グロウルはフルートの旋律と同じ動きで旋律を歌う奏法。
ややグロテスクな音質になりサックスやギターにも負けない音圧に変化させることが出来る為ジャズのアドリブなどで好んで使われる。

ビートボクシング・フルート(フルートウィズボイスパーカッション)(英語:beatboxing flute)
フルートの特殊奏法とは厳密には異なるが、2007年ごろyoutube上で、アメリカのフルーティスト、G・パティロによるヒューマンビートボックス(ボイスパーカッション)をしながらフルートを演奏する動画が話題となった。
フルートを構えバスドラム、スネアドラム、ハイハットのような音と同時にメロディやアドリブを演奏するというものである。

ビスビリャンド・トリル(カラートリル)(イタリア語:bisbiliando trillo)
運指から離れた下のほうのキーを開閉することにより、同音上で微妙に異なる音色によるトリルができる。
運指によっては替え指が微分音下方になることもある。
武満徹が1980年代以降の作品で多用したのはビスビリャンドに似た四分の一音下を含むホロートーントリルであり、特に『海へ』 (I, II, III) において効果的に聞くことができる。
トリスタン・ミュライユはトリルではなく非常にゆっくりとした長い音符の交替による音色の変化を好んで用いる。
サルヴァトーレ・シャリーノはこれに酷似しながらも違った倍音共鳴を伴うハーモニクスとを組み合わせた独自の高速トリルを開発しており、伊佐治直の作品にも見る事ができる。
カラートリルはジャズにおいてビスビリャンド・トリルをする際の呼び名である。

フラッターツンゲ(フラッター、フラッタータンギング、巻き舌)(ドイツ語:Flatterzunge、英語:flutter tonguing)
巻き舌やうがいをするように喉を震わせることにより、トレモロ的効果を生み出す奏法。
舌だと荒めに、喉ではマイルドになる。
巻き舌によるフラッターは先天的な素養も左右するため奏者により向き不向きがあるが、喉によるフラッターは訓練次第で誰でも出来るようになる。
オーケストラではR・シュトラウスが用いたのが最初とされている。
マウスピースを唇で覆いながらフラッターをする事によりパイプ内に響く雑音を造り出すという奏法も存在する。

ホイッスル・トーン(ウィスパー・トーン)(英語:whistle tone)
息を送る具合を調節することにより、高音域において倍音音列に基づく非常に虚ろな音を出す奏法。
表記の定まった音を出すことは非常に難しいが、倍音音列上のグリッサンドはとても効果的に響くため、逆に基音のみ指定しアドリブとしてグリッサンドを指定することも多い。
第3オクターブがもっとも容易に発する音域であるが、第1オクターブも鳴らすことが可能。
低音ホイッスルは野口龍氏の為に書かれた作品に頻出する。
又、歌口を唇で完全に塞ぎ口内の内径を変化させることによりホイッスルトーンと似た音を奏することもできる。

ホロートーン(バンブートーン)
特殊な運指を使用することによって通常の奏法では出せない木管のようなくぐもったおとを出す奏法。
民族楽器のようなテイストになる。
運指表はオランダの奏者W・オッフェルマンズの物がある。

むら息(ブレス・ノイズ、尺八奏法)
上記のエオリアン・トーンをより激しくし、アクセントを加えた奏法。
曲によっては日本の尺八を想起させる。

上記の特殊奏法を組み合わせ、新たな音響を作り出すことも出来る。
例 フラッター+発声奏法、重音奏法+スラップ・タンギング

フルートメーカー

フルートメーカー

アイハラ / Aihara / 日本
アキヤマ / AKIYAMA FLUTE / アキヤマフルート / 日本
アームストロング / Armstrong / アメリカ
アルタス / THE Altus FLUTE / 日本
アルテス
アルパイン / Alpine / 台湾
アルメーダ / Almeida / アメリカ
アリスタ / Arista / アメリカ
イワオ / IWAO FLUTE / イワオ楽器製作所 / 日本
ウイリアムス / Williams / アメリカ
エヴァ・キングマ / Eva Kingma / オランダ
エマーソン / Emerson / アメリカ
エマニュエル / Emanuel / アメリカ
エロイ / Eloy /オランダ
オリエント / ORIENT / 台湾
オルフェウス / Orpheus Musical Instruments / アメリカ
カワイ / Kawai Flutes / 株式会社河合楽器製作所 / 日本
カワイ・メーニッヒ / ドイツ
グロリア / Gloria / 台湾
ゲマインハート / Gemeinhardt / アメリカ
ゴードン / Gordon / アメリカ 頭部管のみ
ゴウ・ブラザース / Guo Brothers / 台湾
コタケ / KOTAKE FLUTE / 小竹管楽器製作所 / 日本
コタト&フクシマ / Kotato&Fukushima Flute / 古田土フルート工房 / 日本
サクライ / SAKURAI FLUTE / 桜井フルート製作所 / 日本
サバレイ / SAVALEY / 中国
サンキョウ / SANKYO FLUTE / 三響フルート製作所[1] / 日本
A.D.ジェフリー / 台湾
シェリダン / D.Sheridan / ドイツ、現在はアメリカ
ジュピター / Jupiter Flute / 台湾
ジョン・ラン / JOHN LUNN FLUTES / アメリカ
ストロビンガー / Straubinger Flutes / アメリカ (キー・パッドのメーカーとしても有名)
スタッフォード・ウィンド / Stafford Wind / 中国
ステファン・ウェッセル / Stephen Wessel / イギリス
スプレンダー / 台湾
セレクション / Selection / 中国
A.セルマー / A.Selmer / アメリカ
ソナーレ / Sonare / アメリカ・台湾
ディメディチ / Dimedici / 台湾
タムラ / Tamura / 日本 / 頭部管のみ
ドルマー / DOLMER
トマジ / W.Tomasi / オーストリア
トム・グリーン / Tom green / アメリカ
トム・レイシー / Tom Lacy / アメリカ
ナガハラ / NAGAHARA Flutes / アメリカ
ナツキ / ナツキフルート / 日本
ノマタ / Nomata
パウエル / VERNE Q.POWELL FLUTES / アメリカ
バーカート / Burkart-Phelan Inc. / アメリカ
パール / Pearl Flute / パール楽器製造株式会社 / 日本
パルメノン / Parmenon / フランス
A.R.ハンミッヒ / August Richard Hammig / ドイツ
H.ハンミッヒ / Helmuth Hammig / ドイツ
J.ハンミッヒ / Johannes Hammig / ドイツ
Ph.ハンミッヒ / Philipp Hammig / ドイツ
フォークト / Horst Voigt / ドイツ
フォリジ / S.FAULISI / フランス
ビュッフェ・クランポン / Buffet&Crampon / フランス
ブラウン / Braun / ドイツ
ブランネン・ブラザース / Brannen Brothers - Flutemakers Inc. / アメリカ
FMCフルートマスターズ / MCA Flute Masters / 日本
ヘインズ / THE HAYNES FLUTE / Wm.S.HAYNES Co. / アメリカ
ヘルナルス
マックストーン / Maxtone / 台湾・中国
マルカート / The Marcato Flute / 台湾
マティット / Matit / フィンランド
マテキ / MATEKI FLUTE / 日本
マンケ / Mancke /ドイツ 頭部管のみ
J.マイケル / J.Michael / 中国
ミヤザワ / The Miyazawa Flute / ミヤザワフルート製造株式会社 / 日本
ムラマツ / The Muramatsu Flute / 株式会社村松フルート製作所 [2]/ 日本
メナート / F.Mehnert / ドイツ
ヤマダ / YAMADA / 山田フルート・ピッコロ工房 / 日本
ヤマハ / YAMAHA Flute / ヤマハ株式会社 / 日本
ラファン / J.R.Lafin / ドイツ (頭部管のみ製作)
ランデール / Jonathon A.Landell / Landell Flute / アメリカ
ルーダル・カート / Rudall & Carte / イギリス (過去「ルーダル&ローズ」「ルーダル・ローズ&カート」などという名称だったことあり)
ロバーツ / Roberts / ドイツ
ロバート・ビギオ / Robert bigio / イギリス
ロパティン / Lopatin / アメリカ

歴史的メーカー

ベーム式のメーカーを記載。

クエノン(ケノン) / Couesnon.S.A / フランス
クランポン / Crampon / フランス
ゴッドフロワ / Godfroy / フランス
トーマス・プラウゼ / Thomas Prowse
ベルショー / Bercioux / フランス
ボンヴィル(ボンヌヴィル) / Bonneville / フランス
リーヴ / Rieve
リッタースハウゼン / Rittershausen / ドイツ
ルイ・ロット(ルイ・ロー) / Louis Lot / フランス
ルブレ / フランス

歴史的メーカー

▲Page Top